超硬の種類~切削加工用超硬?P・M・K・N・S・H?超微粒子超硬?~【超硬コラムVol.2】
切削用超硬と耐摩耗・耐衝撃用超硬は何が違うのか。また、超微粒子超硬合金とは何なのか。
超硬の種類と選定の仕方などをご紹介します。
今回は切削用超硬についての【超硬コラム Vol.2】!!
<<【超硬コラム Vol.1】-超硬の特徴や製造方法、超硬工具のメリット・デメリット-はコチラから☆>>
超硬には、切削工具用超硬や、耐摩耗性・耐衝撃性に優れた耐摩耗・耐衝撃工具用超硬、
一般の超硬よりも硬度が高く、靱性の高い超微粒子超硬合金などがあり、使用用途・目的に合わせた使い分けが必要となります。
適正に使い分けることによって、寿命が長く、加工精度が安定し、仕上げ面粗さが良好になります。
JISによると、『超硬合金とは,超硬合金,サーメット,超微粒超硬合金及びこれらに炭化物,窒化物,酸化物などを被覆した合金の総称である。』とされています。
(表A)超硬合金の種類(JIS B 4053:2013より)
特殊超硬バイト 開発ラボでの超硬コラムでは、HW:超硬合金とHF:超微粒超硬を中心にご紹介していきたいと思います。
切削加工用超硬の種類
【切削加工用超硬】
超硬合金には、切削加工に効果を発揮する切削加工用超硬合金というものがあります。
この切削加工用超硬合金は、金属切削加工の際に、切削工具と被削材が接触する点(切削点)が高温になるため、どうしても化学反応が起こりやすくなります。
このため、刃先・チップには高温環境下でも化学反応しにくいことが求められ、各材種と化学反応しにくいように、超硬合金の含有成分を微調整しています。
【切削加工用超硬の大分類】
JIS(日本工業規格) B 4053 では、切削加工用超硬合金の大分類を、P、M、K、N、S、Hのアルファベットの6種類で規定しています。
このアルファベットによる大分類は超硬合金の組成や成分によるものではなく、元々は切削したときに排出される切りくずの形態に由来し、転じて削る材料の材質によって使い分けるものになりました。
もともとは「P:鋼」「M:ステンレス鋼」「K:鋳鉄」の3種類でしたが、2013年から「N:非鉄金属」「S:耐熱合金・チタン」「H:高硬度材料」が追加されました。これは工業製品の高機能化によって使用される材料も多様化したことが背景です。
ただ、N、S、Hの超硬自体はオリジナルの組成・成分素材ではなく、P、M、Kを使用して、ブレーカーや刃先処理、コーティング等を工夫して、各超硬メーカーが対応しているのが現状です。
JISには他に、結合剤、タングステン粒度、硬さで分けた、耐摩耗工具用超硬合金の材種分類記号もありますので、混合しないようにしてください。
●【P種】(合金成分:WC-TiC-TaC-Co)(識別色:青)
一般的な鋼材の切削で使われる材質です。
連続した切りくずの出る被削材に対して有効とされます。
P種は、タングステン(WC)とコバルト(Co)のほかに、炭化チタン(TiC)や炭化タンタル(TaC)を多く加えた合金で、耐熱性や耐溶着性に優れ、クレーターや熱亀裂のような熱的損傷にも強く高速加工に向いています。
鋼や炭素鋼、合金鋼など、一般的な鋼材の切削に適した材種で、逆に鋼以外に使われることは少ないといえます。
ただ、炭化チタンや炭化タンタルを多く含むほど結合剤であるコバルトと結合しづらいため靭性を下げてしまうことになります。
●【M種】(合金成分:WC-TiC-TaC-Co)(識別色:黄)
連続した切りくず、非連続の切りくずの出る鉄系金属、または低・中強度の鋳鉄、非鉄金属(銅、アルミニウム、真鍮、鉛、スズ、ニッケル、マグネシウムなど)に有効とされる材種です。
炭化チタン(TiC)や炭化タンタル(TaC)を適度に添加させることで、熱的損傷と機械的損傷の両方に強い特性を持たせていて、P種とK種の中間的な性能を持っていますので、
ステンレスを主として、その他鋳鉄や非鉄金属など、幅広い切削に対応できる材種とされています。
●【K種】(合金成分:WC-Co)(識別色:赤)
非連続の切りくずの出る鉄系金属・非鉄金属、または非金属に対して使用されます。
靭性や機械的損傷に優れていて、主に低強度の鋳鉄、非鉄金属(銅、アルミニウム、真鍮、鉛、スズ、ニッケル、マグネシウムなど)、木材・プラスチック・硬質ゴム等に有効です。
超硬はK種を基本形とし、鋼の溶着を低減するために炭化チタン(TiC)や炭化タンタル(TaC)を添加しP種・M種となります。炭化タングステンは、他の超硬質と比較しても硬いので、炭化タングステンの含有量の多いK種は、その他の添加物の多いP種・M種と比べて素材自体の靭性・耐摩耗性は高くなります。
●【N種】(識別色:緑)
非鉄金属やアルミニウム合金などに適しています。
被削材:非鉄金属-アルミニウム、その他の非鉄金属、非金属材料
●【S種】(識別色:茶)
チタン合金や耐熱合金といった熱伝導率の悪い被削材に適しています。
被削材:耐熱合金・チタン-鉄、ニッケル、コバルト基耐熱合金、チタン及びチタン合金
●【H種】(識別色:灰)
高硬度材料や焼入れ鋼に使用されています。
被削材:高硬度材料-高硬度鋼、高硬度鋳鉄、チルド鋳鉄
【切削用超硬合金分類表】
識別記号 | 識別色 | 被削材 |
P | ●青 | 鋼:炭素鋼・合金鋼 |
M | ●黄 | ステンレス鋼 |
K | ●赤 | 鋳鉄 |
N | ●緑 | 非鉄金属:アルミ・銅 |
S | ●茶 | 耐熱合金:チタン・ニッケル |
H | ●灰 | 高硬度材・焼入れ鋼 |
●【Z種】超微粒子超硬合金
超硬よりも硬度が高く、靱性の高い超硬材種に超微粒子超硬合金というものがあります。超微粒超硬とも呼ばれます。
そのなかでも、微粒子超硬・超微粒子超硬・超々微粒子超硬などメーカーによっては分類があり、順に組織を構成する粒子が小さくなっていきます。
超微粒超硬合金は、「Z種」と識別され、JIS記号では「HF」と表記されます。
超微粒子超硬合金も、一般的な超硬と同じように主成分を炭化タングステンとしており、金属および硬質の金属化合物から成る、硬質相粒の平均粒径が1μm未満であるものとされています。
一般的な超硬合金よりも炭化タングステンが極めて微細で、耐微小チッピング性・靭性・耐摩耗性・強度等も含め、一般超硬よりも優れているのが特徴です。
その優れた特徴から、『超微粒超硬=○○用』というように明確に分類されるものではなく、
切削用・耐摩耗・耐衝撃用などの多岐にわたる用途で使用され、近年では材料価格にも大きく変わりが無いため、超微粒子超硬を主体とするユーザー様も増えています。
P10~P50・M10~M40・K01~K40・Z01~Z30など、それぞれのアルファベットの後ろに01~50までの表記で分類された数字は、結合剤(バインダー)の含有量を意味しています。
「結合剤の含有量が少ない=数字が小さい」ほど高硬度で耐摩耗性に優れ、仕上げ加工に向いているとされる反面、靱性が低下するので欠けやすくなります。
逆に数字が大きいほど、結合剤であるコバルトの含有量が多くなるので、靭性は高くなりますが、切れ味への影響や切削速度を遅くするなどの条件面で制限が出てきてしまいますので、
加工する被削材や条件、仕上げ面などによって選定する必要があります。
【識別色】
超硬の色や質感など、外観では判別できないため、識別色が設定されています。
P:青色・M:黄色・ K:赤色・N:緑色・S:茶色・H:灰色と決まっており、
ラベルに表記したり、ロウ付バイトのシャンクに識別色を塗布するなどして区別できるようにしています。
超硬合金を使用した超硬工具の種類にも様々なものがあり、用途によって適切に使い分ける必要があります。
超硬工具の種類についてお困りごとがありましたら、ぜひ【特殊超硬バイト 開発ラボ】にご相談ください。
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