サーメット工具の特徴
サーメット製のスローアウェイチップ
切削工具材料のひとつであるサーメットは、非常に高温硬さが高く、耐酸化性に優れ、金属との親和性も少なく、たくさんの利点もある一方、耐欠損性や耐塑性変形性が高く、扱いづらい点もあります。
ちなみに、サーメット(cermet)という言葉は、セラミック(ceramic)にように硬く、メタル(metal)のように粘り強いという、金属の両方の性質を持っていることから、名付けられています。
サーメットと超硬合金の違いは?
サーメットの組織は超硬合金と似ていまして、硬質材であるWC(炭化タングステン)がTiC(炭化チタン)に、結合剤であるCo(コバルト)がNi(ニッケル)に置き換わったもので、TiC-Niと表記されるときもあります。
サーメットは各工具メーカーが改良を行っており、現在におきましては、主成分は、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭化タンタル(TaC)、窒化タンタル(TaN)で、これらの粉末とニッケル(Ni)、クロム(Cr)、コバルト(Co)などの金属粉末を結合剤として、加熱焼結しています。
サーメットも超硬合金も粉末冶金でつくられ、とてもよく似ているものですが、大きな違いは主成分です。前述のとおり、超硬合金の主成分はタングステン(W)。サーメットの主成分はチタン(Ti)、タンタル(Ta)。そしてタングステン(W)はほとんど含まれていません。
タングステンは鉄との親和性が高いため、超硬で鉄鋼材料を削ると、刃先に切削熱によって溶解した工作物の一部が溶着する現象が起こる一方、サーメットは鉄との親和性が低いため、溶着が生じにくいです。
サーメット工具のメリットとは?
サーメット工具のメリットは3つあります。
①超硬合金より高温硬さが高い
切削用超硬合金とサーメットは常温では、ロックウェル硬さはHRA90~93程度だが、サーメットのほうが高温硬さが高いため、耐摩耗性が良く、より高速切削ができる。
②耐酸化性に優れる
耐酸化性に優れ、切れ刃の寿命が長くなる
③金属との親和性が少ない
構成刃先や溶着が起こりづらい。切削仕上げ面がきれい。
切込み深さが小さく、切削速度が高い条件では、磨耗形態が主として熱的要因(拡散磨耗)になるため、高温硬さが高いサーメットの性能が発揮されます。
サーメット工具のデメリットとは?
サーメット工具のデメリットはズバリ
衝撃に弱く、欠けやすい
です。
サーメットは主成分であるチタンやタンタルをクロム、ニッケルなどで固めた構造で、チタンやタンタルは化学的安定性が高く、結合剤とも反応しにくいため、衝撃に弱く、欠けやすいです。
切込み深さが大きく、切削速度が低い条件では、磨耗形態が主として機械的要因(アブレシブ磨耗)になるため、衝撃に弱いサーメットは適しません。また、断続切削にも向きません。しかも、超硬合金より靭性が低いため、加工中に刃先がポロっとかけてしまうこともあります。
また、チタン、タンタルは熱伝導率が低く、熱容量も小さいため、切削工具の刃先に熱が溜まりやすく、フライス加工で水溶性の切削油を供給すると、 切削時と空転時の熱の高低差によって、刃先に熱亀裂(クラック、欠け)が発生することがあります。
刃物加工においても、サーメットは加工中に熱亀裂が起きやすい、加工しづらい材質です。ロウ付も銀ロウののりが悪く、剥がれやすい材質でもあります。
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■2工程同時加工用スローアウェイチップ こちらは、サーメット製の端面・段同時加工用スローアウェイチップです。
<刃物特性>
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■サーメットロウ付面取りバイト
<刃物特性>
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■サーメット内径溝入れ丸バイト
<刃物特性>
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今回は、サーメットの特徴についてご紹介しました。
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