超硬の種類~耐摩耗・耐衝撃用超硬?超微粒子超硬?~【超硬コラムVol.3】
切削用超硬と耐摩耗・耐衝撃用超硬は何が違うのか。また、超微粒子超硬合金とは何なのか。
超硬の種類と選定の仕方をご紹介します。
今回は耐摩耗・耐衝撃用超硬についての【超硬コラム Vol.3】!!
超硬には、切削工具用超硬や、耐摩耗性・耐衝撃性に優れた耐摩耗・耐衝撃工具用超硬、
一般の超硬よりも硬度が高く、靱性の高い超微粒子超硬合金などがあり、使用用途・目的に合わせた使い分けが必要となります。
適正に使い分けることによって、寿命が長く、加工精度が安定し、仕上げ面粗さが良好になります。
JISによると、『超硬合金とは,超硬合金,サーメット,超微粒超硬合金及びこれらに炭化物,窒化物,酸化物などを被覆した合金の総称である。』とされています。
(表A)超硬合金の種類(JIS B 4053:2013より)
特殊超硬バイト 開発ラボでの超硬コラムでは、HW:超硬合金とHF:超微粒超硬を中心にご紹介していきたいと思います。
超硬には切削用超硬の他に、耐摩耗用超硬や耐衝撃工具用超硬というものがあります。
耐摩耗用超硬は細粒子炭化物を用いた超硬合金で、高硬度・高圧縮強度を備えた耐食性に優れたものです。
パンチ・ダイ・金型・摺動部品・粉砕用刃物などに使用されます。
耐衝撃用超硬は中~粗粒子炭化物を用いた超硬合金で、冷間鍛造に代表される耐衝撃性を必要とする分野に適用されます。土木・鉱山工事などのビットに使用されます。
耐摩耗・耐衝撃工具用超硬はJIS B 4054:2020 (CIS規格) において、耐摩耗工具用超硬合金の材種選択基準として記述があります。
結合相の種類・WC粒度・硬さにより分類された種類があり、下記表を参照し、適切な材質を選定する必要があります。切削工具用超硬・超微粒子合金など、全ての超硬合金が下記表に当てはまります。
(JIS B4054:2020より引用)
1.バインダー(結合剤)の違い (表1)
大多数の超硬合金は、バインダーにコバルトを使用します。コバルト量が増えると硬度が下がり、抗折力は上がります。逆にコバルト量が減ると硬度は上がり、抗折力は下がります。
また、用途によってはニッケルも使われます。超硬合金は磁性がないイメージがありますが、全く無いわけではありません。(コバルトには磁性があります)ニッケルのみになりますと、非磁性になり、磁性が許されない部品などに採用されます。
V・・・コバルト(Co)
R・・・コバルト+ニッケル(Co-Ni)
N・・・ニッケル(Ni)
2.タングステン粒度の大きさの違い (表2)
タングステンの粒度が大きければ、靭性が高くなり衝撃性が強くなりますが、硬度は低くなります。また、タングステンの粒度が細かくなれば、高い抗折力と硬度を得られ、よりシャープエッジな刃先を実現し、耐摩耗性もアップ出来ますが、破壊靭性は弱くなります。
1.0μm未満の超硬合金を超微粒子超硬合金(Z種)と呼びます。また、更に粒度0.5μm未満にしたものを超々微粒子合金とも呼んでいます。非常に細いマイクロドリル、刃先のシャープエッジを重視したスリッター刃などに使用されたりします。
F・・・タングステン粒度1.0μm未満
M・・・タングステン粒度1.0μm以上2.5μm未満
C・・・タングステン粒度2.5μm以上5.0μm未満
U・・・タングステン粒度5μm以上
3.硬さの違い (表3)
超硬合金は硬ければ硬いほどいいのかというと、そうでもなく、用途によって、適切な靭性や適度な硬度が求められます。磨耗具合やチッピング・クラックなど、使用条件に合わせて、選択します。数字が上がる程、硬度は低下します。
10・・・HRA93以上
20・・・HRA92以上HRA93未満
30・・・HRA91以上HRA92未満
40・・・HRA89以上HRA91未満
50・・・HRA87以上HRA89未満
60・・・HRA85以上HRA87未満
70・・・HRA82以上HRA85未満
80・・・HRA82未満
耐摩耗・耐衝撃工具用超硬合金の材種分類記号 (表中(a)はバインダーレス)
●超々微粒子合金
タングステン粒度0.5μm未満の超硬合金。抗折力が高く、耐摩耗性に優れる。刃立ち性も良く耐微小チッピング性にも優れる。リードフレーム打ち抜き用金型、プリント基板用ドリル、せん断刃、切断刃などに使われます。
●放電加工用超硬合金
WCやCoを調整することにより、放電加工やワイヤーカット加工による電飾や腐食を防ぎます。精密金型、タイバーカットなどに使われます。
●非磁性超硬(耐食超硬)
WC(タングステン)同士を固めるバインダー(結合剤)を、磁性を持たないNi(ニッケル)にすることにより、自ら磁性を持たない超硬を非磁性超硬と呼びます。また、加工により磁性を持つこともありません。磁気テープ用工具、電子部品、半導体部品などに使用されます。
●バインダレス超硬(高硬度・高耐摩耗超硬)
超硬のバインダー(結合剤)である、Co(コバルト)やNi(ニッケル)を含まない超硬合金です。Co(コバルト)を含まないため、非磁性超硬でもあります。
硬度は通常の超硬より硬く、2000~2550HVにもなり、耐摩耗性が非常に高いです。また、バインダレスのため、腐食に強いことも特徴のひとつです。ただ、余りにも硬いため、カケが発生しやすいのが短所です。用途としましては、衝撃が掛からない部品、各種ノズル、ガイド、レンズ金型などに使われています。また、硬さを生かして、軽切削の精密な切削工具に使用される事例も増えて来ています。
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このように、超硬合金にはいろいろな材種分類があります。
超硬合金を使用した超硬工具の種類にも様々なものがあり、用途によって適切に使い分ける必要があります。
超硬材種や工具用途の選定について、お困りごとがありましたら、ぜひ 【特殊超硬バイト 開発ラボ】にご相談ください。
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